## カルヴィーノの見えない都市を読む
都市と記憶の関係性について
イタロ・カルヴィーノの『見えない都市』は、マルコ・ポーロがフビライ・ハンに、自身が訪れたという様々な都市について語る形式をとっています。しかし、これらの都市は実在する都市ではなく、記憶、言語、想像力などをテーマとした、寓話的、象徴的な都市として描かれます。
作中で語られる都市は、現実の都市が持つ複雑さを抽象化し、特定のテーマを際立たせることで、読者に都市と人間の関係性について深く考えさせるものとなっています。例えば、吊り下げられた都市である「イソラ」は、不安定な均衡と、崩壊への恐怖を描いています。一方、幸福な都市として描かれる「エウセビア」は、過去と現在が織りなす複雑な関係性を浮き彫りにしています。
語り手と聞き手の関係性
『見えない都市』は、マルコ・ポーロの語る都市の物語を通して、語り手と聞き手の関係性も浮かび上がらせます。フビライ・ハンは、ポーロの語る都市の物語を通して、自らの帝国の未来、そして人間の欲望や野望について思いを巡らせます。
二人の会話は、単なる情報伝達ではなく、想像力と解釈を通して、新たな意味や価値観を生み出す行為として描かれています。ポーロの語る都市は、聞き手であるフビライ・ハンだけでなく、読者一人ひとりの内面にも投影され、それぞれの解釈によって異なる姿を見せるのです。
メタフィクションとしての側面
『見えない都市』は、小説の枠組みを超えて、メタフィクションとしての側面も持ち合わせています。作中では、都市の描写を通して、言語の限界や、現実と虚構の境界線について言及される場面も登場します。
例えば、「ゾライダ」は、人々の欲望が作り出す幻影の都市として描かれ、言葉が現実を完全に捉えきれないことを示唆しています。また、「デシピーナ」は、人々が自らに都合の良い虚構の世界に逃避しようとする姿を描き、現実と虚構の曖昧な関係性を浮き彫りにします。