カルヴィーノの見えない都市の世界
作品概要
イタロ・カルヴィーノの小説「見えない都市」は、1972年にイタリアで出版されました。 マルコ・ポーロとフビライ・ハーンという二人の歴史的人物を語り手と聞き手に設定し、架空の都市の物語が語られるという形式をとっています。
物語の構造
物語は、都市の記述が9つずつのグループに分けられ、それらのグループが「記憶」「欲望」「記号」「薄明」「交易」「目」「名前」「死者」「空想」という9つのテーマに分類されるという、複雑な構造を持っています。 各テーマのグループは、さらに「ハーンの問い」と呼ばれる短い章によって区切られています。
都市の描写
作中で語られる都市は、いずれも現実には存在しない架空の都市です。 各都市はそれぞれ独自の寓意的な性格を持ち、「都市と記憶」「都市と欲望」など、都市と様々な概念との関係が描かれています。 都市の描写は、詩的で幻想的なイメージと、建築や社会構造など具体的なディテールを組み合わせた独特のスタイルで展開されます。
登場人物
主な登場人物は、東方見聞録で知られる旅行家マルコ・ポーロと、元朝の皇帝フビライ・ハーンの二人です。 マルコ・ポーロは、訪れたことのない都市についてさえ、詳細な報告をハーンに聞かせます。 一方、フビライ・ハーンは、マルコ・ポーロの話を通して、自らの帝国の広大さと、その背後にある空虚さ、そして支配することの限界について思いを巡らせます。
解釈
「見えない都市」は、多様な解釈を許容する作品です。 都市と人間の関係、言語と意味の問題、歴史と記憶の曖昧さ、東洋と西洋の対比など、様々なテーマを読み取ることができます。 明確な結論は示されておらず、読者それぞれが独自の解釈を見出すことが求められます。