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カルヴィーノの見えない都市に関連する歴史上の事件

## カルヴィーノの見えない都市に関連する歴史上の事件

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都市の破壊と再生

 イタロ・カルヴィーノの『見えない都市』は、マルコ・ポーロがフビライ・ハンに、彼が訪れたという架空の都市について語るという形式をとっています。これらの都市はそれぞれ、人間の欲望や恐怖、社会構造、そして文明の栄枯盛衰を象徴しており、歴史上の具体的な出来事との直接的な関連は希薄です。

 しかし、第二次世界大戦中にナチス・ドイツによって破壊された都市ワルシャワの経験は、カルヴィーノの都市観に大きな影響を与えたと考えられています。カルヴィーノ自身もパルチザンとして戦争に参加し、故郷イタリアの都市が破壊されるのを目の当たりにしました。こうした経験は、『見えない都市』における都市の崩壊と再生、記憶と喪失といったテーマに深く関わっていると言えるでしょう。

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帝国主義と植民地主義

 『見えない都市』は、13世紀から14世紀にかけて栄華を極めたモンゴル帝国の皇帝フビライ・ハンに、旅人マルコ・ポーロが見たという設定で、様々な都市の物語が語られます。これは、大航海時代を経てヨーロッパ諸国が世界各地を植民地化していった歴史を彷彿とさせます。

 フビライ・ハンは未知の都市について語るマルコ・ポーロの話に耳を傾けることで、自らの帝国の広大さと多様性を認識しようとします。しかし同時に、それらの都市を支配下に置くことへの欲望も垣間見えます。

 このような帝国と植民地の関係は、『見えない都市』のいくつかの都市に見ることができます。例えば、「都市と欲望」の章に登場する都市イシドラは、人々の欲望が作り出した幻想の都市ですが、その虚構性ゆえに支配者の欲望を満たすための道具となりえます。

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産業革命と都市化

 18世紀後半から19世紀にかけて起こった産業革命は、人々の生活様式を一変させると同時に、都市への人口集中とスラム化などの社会問題を引き起こしました。『見えない都市』のいくつかの都市は、そうした近代都市が抱える問題を象徴的に描いていると解釈することができます。

 例えば、「都市と記号」の章に登場する都市ゾイルは、無数の記号で埋め尽くされた都市であり、人々は記号によってのみコミュニケーションをとります。これは、情報過多やコミュニケーションの断絶といった現代社会の問題を予見しているかのようです。

 このように、『見えない都市』は具体的な歴史上の事件を直接的に扱っているわけではありませんが、歴史の大きな流れの中で生じた都市の変容や人間の営みを、幻想的な物語を通して浮かび上がらせています。

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