## カミュの異邦人の対称性
登場人物の対称性
「異邦人」には、主人公ムルソーと対照的な人物が複数登場します。
* **ムルソーとレイモン:** ムルソーは感情表現が乏しく、社会の慣習に無関心ですが、レイモンは自分の感情に正直で、社会的な承認を求める人物として描かれています。この対比は、ムルソーの異邦人としての立場をより際立たせる効果を持っています。
* **ムルソーとマリー:** マリーはムルソーに対して愛情を求めますが、ムルソーはマリーへの愛情を言葉で表現することができません。この対比は、ムルソーの人間関係における不器用さを象徴しています。
* **ムルソーと神父:** ムルソーは神の不在、来世や魂の存在を信じない無神論者ですが、神父は神への信仰を強く持っています。この対比は、ムルソーの死生観を明確にする役割を担っています。
構成上の対称性
「異邦人」は、ムルソーの母親の死から始まる前半部と、アラブ人殺害後の裁判を中心に展開する後半部という、大きく二つの部分に分けられます。
* **太陽のモチーフ:** 前半部では、母親の葬儀の際に照りつける太陽、海水浴の際の太陽など、太陽がムルソーの行動に影響を与える描写が繰り返されます。後半部では、アラブ人殺害の場面で太陽が重要な役割を果たします。このように、太陽は前半と後半を繋ぐモチーフとして機能しています。
* **裁判における反復:** ムルソーは、母親の葬儀での態度や、マリーとの関係、レイモンとの関係など、前半部での言動を後半部の裁判で繰り返し問いただされます。この反復構造は、ムルソーが社会の価値観から逸脱した存在として裁かれていることを強調しています。
その他
* **単純な文体の反復:** カミュは「異邦人」において、短く簡潔な文体を多用しています。この文体は、ムルソーの感情の起伏が少ない性格や、客観的な視点で世界を眺めている様子を表現する効果を生み出しています。
これらの対称性は、作品に多層的な意味や解釈の可能性を与え、「異邦人」をより深みのある作品にしています。