カミュのペストを面白く読む方法
１． ペストを「寓話」として読む
『ペスト』は、しばしば「実存主義文学」の代表作として語られます。しかし、最初から難解な哲学書を読むような気持ちでページを開いてしまうと、その魅力を十分に味わえないかもしれません。『ペスト』は、ペストという感染症に襲われた街を舞台に、極限状況における人間の様々な生き様を描いた「寓話」として読むと、より面白く読み進めることができます。
「寓話」には、隠喩や象徴を通して、現実の世界や人間の本質を浮かび上がらせるという側面があります。『ペスト』における「ペスト」も、単なる感染症ではなく、悪や不条理、全体主義、戦争など、様々なイメージと結びつけられています。
読者は、「ペスト」が象徴するものを自分なりに解釈しながら、登場人物たちの行動や心理を追っていくことができます。
２． 登場人物たちの「生き様」に注目する
『ペスト』には、医師リウーをはじめ、様々な立場の登場人物が登場します。ペスト禍という極限状況の中で、彼らはそれぞれの「正義」や「信念」に基づいて行動しようとします。
例えば、リウーは医師として、ペストと闘うことを自分の使命だと考えます。一方、ジャーナリストのランベールは、愛する人の待つパリへ戻ることを望み、街からの脱出を試みます。
このように、登場人物たちは必ずしも「正しい」行動ばかりをとるとは限りません。時には、利己的な行動をとったり、絶望に打ちひしがれたりする姿も描かれます。しかし、だからこそ、彼らの葛藤や成長から、人間の本質や生の意味について深く考えさせられるのです。
３． 「時代背景」を意識する
『ペスト』は、1947年に発表されました。第二次世界大戦直後の時代背景を意識することで、作品をより深く理解することができます。
当時のフランスは、ナチス・ドイツによる占領から解放されたばかりでした。人々は、戦争の傷跡が生々しい中で、新たな生活を築こうとしていました。カミュは、そんな時代背景を踏まえ、「ペスト」を戦争や全体主義のメタファーとして描いたと言われています。
作中に描かれる、ペストの恐怖や人々の不安、連帯感、そして抵抗といったテーマは、戦争体験と深く結びついています。当時の時代背景を理解することで、カミュが『ペスト』を通して何を伝えようとしたのか、より鮮明に浮かび上がってくるでしょう。
４． 自分と「対話」しながら読む
『ペスト』は、容易に答えを出せるような作品ではありません。むしろ、読み終えた後も、様々な問いが心に残り続ける作品です。
大切なのは、登場人物たちの行動や心理、そして時代背景について、自分なりに考えを深めていくことです。
「もしも自分が登場人物と同じ立場だったら、どう行動するだろうか？」
「現代社会における『ペスト』とは一体何だろうか？」
このような問いを自らに投げかけながら、作品と「対話」することで、『ペスト』はより一層、面白く、そして意義深い読書体験となるはずです。