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カミュのペストの対称性

## カミュのペストの対称性

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時間の対称性

小説は、リウーの手記という形で、ペストの発生から終息までを時系列に沿って描いています。これは一見、直線的な時間の流れを示唆しているように思えます。しかし、ペストの発生と終息、そしてその間の出来事には、ある種の対称性が見て取れます。

例えば、街が封鎖される場面と開放される場面、パニックの発生と終息、リシャールとタルーの死など、対照的な出来事が対になって現れ、物語に循環的な印象を与えています。これは、ペストという異常事態が終息しても、また別の形で繰り返される可能性を示唆しているとも解釈できます。

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登場人物の対称性

登場人物たちの間にも、いくつかの対称性が存在します。例えば、医師であるリウーはペストと闘うことを決意する一方、ジャーナリストのランベールは街からの脱出を試みます。また、神への信仰を貫くパネルーと、無神論者を自称するタルーも対照的な人物として描かれています。

これらの対照的な人物像は、ペスト禍という極限状態における人間の多様な行動や倫理観を浮き彫りにしています。そして、善悪二元論では割り切れない人間の複雑さを表現していると言えるでしょう。

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空間の対称性

小説の舞台となるオランは、閉鎖された空間として描かれています。街はペストによって外界から隔離され、人々は限られた空間の中で生活することを余儀なくされます。

この閉鎖空間は、ペスト禍という異常事態を象徴すると同時に、人間の存在そのものを表しているとも言えます。人間は、有限の生という閉ざされた空間の中で、苦しみや死といった普遍的な問題に向き合わざるを得ない存在なのです。

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