## カポーティの冷血を面白く読む方法
事件の背景や社会状況を事前に調べておく
「冷血」は、1959年にアメリカで実際に起きたクルー家惨殺事件を題材にしたノンフィクション・ノベルです。 まず小説を読む前に、事件の概要、当時のアメリカの社会状況、事件が起きたカンザス州ホルカムの町の雰囲気などを調べてみましょう。 インターネットや図書館で簡単に情報収集できます。
事件の背景を知ることで、登場人物たちの置かれた状況や心理状態がより深く理解できるようになり、物語への没入感が高まります。 例えば、当時のアメリカ社会は経済的に豊かになりつつも、伝統的な価値観が崩壊し始め、不安や不満を抱える人々が増えていました。 このような時代背景が、犯人たちの心理や事件の起こるべくして起こった側面を浮き彫りにするでしょう。
カポーティの文体に注目する
カポーティは「ノンフィクション・ノベル」という新しいジャンルを確立した作家として知られています。 これは、事実に基づいた物語を小説の手法を用いて描くという、従来の枠にとらわれない手法です。
「冷血」では、客観的な事実描写と登場人物の内面を描写する主観的な表現が巧みに使い分けられています。 例えば、事件現場の様子は克明に描写される一方で、犯人のペリー・スミスについては、彼の生い立ちや内面にまで深く迫ろうとしています。 このようなカポーティの文体に注目することで、事件のリアリティと同時に、人間の深淵を描き出そうとする作家の意図を読み取ることができるでしょう。
また、カポーティは映画の脚本を書くように、場面転換や登場人物の視点を効果的に用いることで、まるで映画を見ているかのような臨場感とサスペンスを生み出しています。 このような映画的手法を意識しながら読むことで、物語をより深く楽しむことができるでしょう。
登場人物一人ひとりの心理に寄り添って読む
「冷血」は、被害者であるクルー家の家族だけでなく、犯人のペリーとディック、そして事件に関わる様々な人々の視点から描かれています。
それぞれの登場人物の心情や背景、彼らが事件に対して抱く思いに心を傾けながら読むことで、事件の複雑さや人間の心の奥深さが浮かび上がってきます。 例えば、一見残忍な犯人であるペリーも、複雑な生い立ちやトラウマを抱えており、彼なりの正義や葛藤の中で苦しんでいたことがわかります。
「冷血」は単なる犯罪小説ではなく、善悪だけでは割り切れない人間の心の闇や、社会の矛盾を映し出す作品です。 読者は、登場人物たちの心理を追うことで、事件の真相だけでなく、人間の存在そのものについて深く考えさせられるでしょう。