## カポーティの冷血の表象
###
非情な殺害の描写
カポーティは、クルーター一家殺害を克明に、そして冷酷なまでに描写しています。一家全員が、眠っている間に至近距離からショットガンで撃たれています。特に、16歳のナンシーは顔面を撃ち抜かれており、その凄惨な様子が読者の脳裏に焼き付きます。このような具体的な描写は、読者に事件の残虐さを突きつけると同時に、犯人たちの冷酷さを浮き彫りにしています。
###
犯人たちの心理描写
カポーティは、犯人であるペリー・スミスとディック・ヒコックの心理描写にも力を入れています。 特にペリーの複雑な内面は、彼の生い立ちやトラウマ、そして歪んだ倫理観と合わせて描かれ、読者に一種の共感を抱かせます。一方で、冷酷で打算的なディックの姿は、ペリーとは対照的に描かれています。カポーティは、彼らを単純な「悪人」として断罪するのではなく、その背景や心理を深く掘り下げることによって、事件の複雑さを浮き彫りにしています。
###
客観的な視点
カポーティは、ノンフィクション小説という形式を取りながらも、極力客観的な視点で事件を描写しようと努めています。登場人物の心情や事件の背景、裁判の様子などは、綿密な取材に基づいて描かれており、カポーティ自身の主観や感情は排されています。このような冷徹なまでに客観的な描写が、逆に事件の持つ異常性や不条理さを際立たせています。