カポーティの冷血の発想
事件との出会い
1959年11月15日、カポーティは『ニューヨーク・タイムズ』紙でカンザス州ホルコムの一家惨殺事件の記事を目にします。裕福な農場主一家4人が、何者かにより冷酷に殺害されたこの事件は、当時のアメリカ社会に大きな衝撃を与えました。
ノンフィクション・ノベルへの挑戦
カポーティはこの事件に強い関心を抱き、事件の真相と犯人の深層心理に迫る作品を書こうと決意します。彼は従来のルポルタージュとは異なる、小説の手法を取り入れた新しいノンフィクション作品、すなわち「ノンフィクション・ノベル」を構想します。
綿密な取材と膨大な記録
カポーティは友人で作家のハーパー・リーと共にカンザス州ホルコムを訪れ、6年間にわたる綿密な取材を開始します。彼は事件関係者、地元住民、捜査官など、多くの人々にインタビューを行い、膨大な記録を残しました。
犯人との対話
カポーティは逮捕された犯人の一人、ペリー・スミスと長時間にわたり面会し、その生い立ちや犯行に至るまでの心理状態を詳細に聞き取ります。この対話は、作品に犯人側の視点を与え、事件の深層に迫る上で重要な役割を果たしています。
客観性と主観性の融合
カポーティは事件の背景、犯人の心理、裁判の経過などを、綿密な取材に基づいて克明に描写しながらも、自身の視点や解釈を交えず、客観的な立場を保つように努めました。 しかし一方で、登場人物の心理描写や事件に対する自身の感情を織り交ぜることで、読者が事件をより深く理解し、登場人物に共感できるように工夫しています。