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カポーティの冷血の比喩表現

## カポーティの冷血の比喩表現

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荒涼とした風景描写

カポーティは、『冷血』において、犯罪現場であるカンザス州ホールカムの寒々とした風景描写を効果的に用いることで、登場人物たちの内面や、事件そのものが持つ冷酷さを浮き彫りにしています。

例えば、物語冒頭で描かれる広大な小麦畑は、一見すると牧歌的なアメリカの田園風景を思わせます。しかし、カポーティは、その広がりを「果てしなく続く空虚さ」と表現することで、読者に孤独感や不安感を抱かせます。

さらに、事件が起きたクルーター家の家は、「見渡す限りの平原にポツンと建つ」と描写され、その孤立した様子は、一家が社会から切り離され、外界から助けを得られない状況を暗示しています。

このように、カポーティは、美しい田園風景としてではなく、冷たく容赦のない自然としてカンザスの風景を描くことで、事件の悲惨さをより一層際立たせているのです。

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動物にたとえることで人物の内面を表現

カポーティは、登場人物の心理描写においても比喩表現を巧みに駆使しています。特に、犯人であるペリーとディックの行動や心情を動物にたとえることで、彼らの残忍性や不安定さを強調しています。

例えば、ペリーは、作中でたびたび猫のように「しなやかな動き」をする人物として描写されます。これは、一見すると魅力的に見える彼ですが、その実態は捕食動物のように危険な存在であることを示唆しています。

一方、ディックは、「檻の中でうろつくハイエナ」にたとえられます。これは、凶暴でありながらも、どこか臆病で卑屈な彼の性格を的確に表現しています。

このように、カポーティは、動物の持つ野性的なイメージを利用することで、登場人物たちの内面をより深く、そして生々しく描き出しているのです。

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