カポーティの冷血の技法
ノンフィクション・ノベルという新しいジャンル
「カポーティの冷血」は、実際に起きた一家惨殺事件の詳細な取材に基づき、犯人であるペリー・スミスとディック・ヒコックの心理描写を綿密に描いた作品です。カポーティはこの作品において、ジャーナリズムの客観性と小説の手法を融合させ、「ノンフィクション・ノベル」という新しいジャンルを確立しました。
綿密な取材と膨大な資料
カポーティはこの作品を執筆するために、6年もの歳月をかけて事件の関係者への取材を重ねました。
FBIの捜査資料や裁判記録、手紙なども丹念に調べ上げ、膨大な量の資料を収集しました。
特に、犯人の一人であるペリー・スミスと親密な関係を築き、長時間にわたる面会を重ねたことは有名です。
登場人物の視点の多重構造
カポーティは、事件の関係者それぞれの視点から物語を描くことで、事件に対する多角的な視点を提示しています。
特に、被害者家族、捜査官、そして犯人であるペリーとディックの心理を丁寧に描写することで、事件の複雑さを浮き彫りにしています。
このような多視点の構成は、読者に事件の全体像を理解させると同時に、登場人物一人ひとりの心情に深く感情移入させる効果を生み出しています。
客観的な描写と主観的な描写の融合
カポーティは、ジャーナリストとしての客観性を保ちつつ、小説家としての想像力を駆使することで、事件の描写に深みを与えています。
事件の背景や状況説明などでは客観的な事実を淡々と描写する一方で、登場人物の心理描写においては、彼らの心情を繊細に表現しています。
このような客観性と主観性のバランスが、読者に強いリアリティと文学的な感動を与えていると言えるでしょう。