## カポーティの冷血の世界
作品概要
Truman Capote が 1966 年に発表したノンフィクション小説です。 1959 年にカンザス州で実際に起きた一家惨殺事件を題材に、綿密な取材と巧みな構成、そして小説的手法を用いることで、従来のノンフィクションの枠を超えた作品として高い評価を受けました。
舞台
アメリカ中西部に位置するカンザス州の小さな田舎町、ホルカムが舞台です。 広大な小麦畑が広がる静かで平和なこの町で、裕福な農場主一家であるクラッター家が惨殺されるという衝撃的な事件が起きます。
登場人物
* **クラッター家**
* **ハーブ・クラッター**: 一家の主で、成功した農場経営者。地域社会でも尊敬を集める人物。
* **ボニー・クラッター**: ハーブの妻。精神的に不安定な一面を持つ。
* **ナンシー・クラッター**: クラッター家の長女。16 歳で、明るく人気者。
* **ケニオン・クラッター**: クラッター家の長男。15 歳で、内向的で趣味に没頭する。
* **犯人**
* **ペリー・スミス**: 小柄で片足が不自由な男。複雑な家庭環境で育ち、情緒不安定な一面を持つ。
* **ディック・ヒコック**: 長身でハンサムな男。頭脳明晰だが、衝動的で冷酷な一面を持つ。
事件
1959 年 11 月 15 日の未明、クラッター家の４人が自宅で惨殺されます。 犯人は、金庫にある大金目当てで家に押し入りますが、実際には金庫はなく、犯行後わずかな現金とラジオを持ち去るだけに終わります。 事件は全米を震撼させ、犯人逮捕まで町は恐怖と不安に包まれます。
事件後
FBI の捜査により、ペリーとディックが犯人として逮捕されます。 裁判では、動機や責任能力をめぐって激しい議論が交わされます。 2 人は死刑を宣告され、約 6 年の服役の後、1965 年に絞首刑となります。
カポーティと事件の関係
カポーティは、事件の新聞記事を読み、強い興味を抱きます。 彼は、友人で同じく作家のハーパー・リーと共にホルカムを訪れ、長期間にわたる取材活動を行います。 カポーティは、事件関係者や地元住民へのインタビューを重ね、膨大な量の資料を収集しました。
作品の特徴
* **ノンフィクション・ノベル**
* カポーティは、綿密な取材に基づいて事件を可能な限り客観的に描写しようとしながらも、登場人物の心情や事件当時の町の雰囲気などを、小説の手法を用いて鮮やかに描き出しています。 このような作品は、従来のジャーナリズムの枠組みを超えた新しいノンフィクションとして、「ノンフィクション・ノベル」と呼ばれます。
* **多角的な視点**
* カポーティは、被害者家族、犯人、捜査関係者、地元住民など、様々な登場人物の視点から事件を描写することで、事件の複雑さを浮き彫りにしています。 特に、犯人であるペリーとディックの生い立ちや心理状態を詳細に描くことで、彼らがなぜこのような凶悪な犯罪に手を染めてしまったのかを考察しています。
* **善悪の境界線**
* カポーティは、単純な勧善懲悪の構図に陥ることなく、善と悪、正気と狂気といった二項対立を超えた、人間の心の奥底にある闇の部分を描き出そうと試みています。