## カポーティの「冷血」の秘密
事件の残忍性と動機
1959年11月15日、カンザス州ホルトコムで裕福な農場主一家、ハーブ・クラッター、妻のボニー、高校生のナンシーとケニオンの4人が自宅で惨殺されるという衝撃的な事件が発生しました。犯人は現金、債券、ラジオ以外何も盗まず、動機は不明のままでした。
カポーティと事件の出会い
事件のニュースを新聞で見た作家トルーマン・カポーティは、この不可解な事件に強い興味を抱き、事件の真相に迫るノンフィクション小説を書くことを決意します。彼は幼馴染の作家ハーパー・リーを助手として連れ、ホルトコムの町を訪れました。
綿密な取材と関係者の葛藤
カポーティは事件の関係者、地元住民、捜査官に綿密な取材を重ね、膨大な量のメモや資料を集めました。特に、逮捕された犯人のペリー・スミスとディック・ヒコックと面会を重ね、彼らの生い立ちや心理状態を探りました。
しかし、カポーティの取材活動は、必ずしも地元住民に歓迎されたわけではありませんでした。事件のトラウマを抱える住民もおり、カポーティの執拗な取材に反発する人もいました。また、カポーティとハーパー・リーの意見の相違や葛藤も表面化していきました。
「冷血」の出版とその後
6年の歳月を経て、1966年、「冷血」は出版され、たちまちベストセラーとなりました。綿密な取材に基づいた事件の描写、登場人物たちの心理描写は高く評価され、ノンフィクション小説という新しいジャンルを確立した作品として、文学史に名を刻みました。
しかし、その一方で、カポーティは「冷血」の執筆過程で、取材対象者との距離感、事実に基づいた描写と脚色の境界線、ジャーナリズム倫理など、様々な問題に直面しました。