## カポーティの「冷血」とアートとの関係
ノンフィクション・ノベルという新しいジャンル
カポーティは「冷血」を「ノンフィクション・ノベル」と呼称し、従来のジャーナリズムの枠を超えた、新しい文学の形を目指しました。彼はこの作品において、綿密な取材に基づく事実を積み重ねながらも、小説的な描写や構成を用いることで、事件と登場人物の心理を深く掘り下げています。
客観性と主観性の葛藤
「冷血」は、作者自身の視点や感情を極力排除し、客観的な視点から事件を描き出すことに努めています。しかし一方で、登場人物の心理描写や事件の背景を描く際には、カポーティ自身の主観的な解釈が介入していることも事実です。この客観性と主観性のせめぎ合いが、作品に独特の緊張感と深みを与えています。
リアリティの追求と美意識
カポーティは「冷血」において、徹底した取材に基づくリアリティの追求と、洗練された文章表現による美意識の両立を目指しました。彼は事件の関係者へのインタビューや膨大な資料調査を通して、事件の真相に迫ると同時に、詩的な表現や象徴的な描写を用いることで、読者に鮮烈な印象を与える作品を作り上げています。