## カッシーラーのシンボル形式の哲学の表象
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表象とは
カッシーラーにおいて「表象」は、人間が世界を認識する際に介在する、感覚データと概念の媒介物です。カッシーラーは、人間は動物と異なり、世界を「そのまま」受け取るのではなく、「シンボル」を通して世界を把握すると考えました。このシンボルは、感覚器官を通じて得られた生の感覚データを、人間が理解可能な形式へと変換する働きを持ちます。表象は、このシンボルを用いた世界の把握を実現する、人間の認識能力そのものを指します。
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シンボル形式における表象の役割
カッシーラーは、人間は多様なシンボル形式を用いて世界を認識すると考え、「シンボル形式の哲学」を提唱しました。言語、神話、芸術、科学など、人間の文化活動は全て独自のシンボル形式を用いており、それぞれが世界の異なる側面を照らし出す役割を担います。
表象は、これらの多様なシンボル形式において、感覚データと概念を結びつける役割を担います。例えば、私たちが「りんご」という単語を耳にした時、その言葉は単なる音の羅列ではなく、「赤い」「丸い」「甘い」といった感覚データと結びついた概念として理解されます。これは、表象が「りんご」というシンボルと過去の経験に基づいた感覚データを結びつけることで、意味を持った認識を可能にしているからです。
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表象の能動性
カッシーラーは、表象を静的なものではなく、能動的な働きを持つものと捉えました。人間は、受動的に世界を認識するのではなく、能動的にシンボル形式を用いて世界を構成していきます。表象は、この能動的な世界構成において中心的な役割を果たします。
人間は、新しい経験を通して絶えずシンボル形式を修正・発展させていきます。この過程において、表象は過去の経験に基づいた感覚データと新しい感覚データとを結びつけ、シンボル形式に修正を加えることで、より精緻な世界認識を可能にします。
このように、カッシーラーの哲学において、表象は人間の認識能力の中核をなすものであり、シンボル形式を通して世界を理解し、構成していくための不可欠な要素と言えるでしょう。