## オースティンのマンスフィールド・パークの技法
語り – 自由間接話法
オースティンは『マンスフィールド・パーク』において、当時の小説では一般的であった全知的な語り手による三人称に加え、自由間接話法を用いることで、ファンニー・プライスの内面世界を巧みに描き出しています。自由間接話法とは、地の文の中に登場人物の思考や感情を織り交ぜる技法です。これにより、読者はファンニーの目を通して物語を体験し、彼女の繊細な感情の動きや成長をより深く理解することができます。
例えば、バートラム家がロンドンへ出発する場面で、ファンニーは一人残される寂しさを感じますが、それを直接言葉にはしません。しかし、オースティンは自由間接話法を用いることで、彼女の心情を以下のように表現しています。
> “The Miss Bertrams were ready, and they all went down to the breakfast-room, where Mr. Norris was already seated; and where they had not been long, before Fanny heard the carriage drive up to the door.”
この文章では、客観的な描写の中に「Fanny heard the carriage drive up to the door」という、ファンニーの主観的な感覚が織り込まれています。これにより、読者はファンニーが carriages の音を聞き、彼らの出発を悟り、寂しさを感じていることを間接的に理解することができます。
登場人物描写 – 対比
『マンスフィールド・パーク』では、登場人物たちが互いに影響し合い、対比されることで、それぞれの性格や価値観がより鮮明に浮かび上がります。
例えば、主人公のファンニーと、その従姉妹にあたるマリアとジュリアは、育った環境や性格が対照的な存在として描かれます。ファンニーは慎み深く控えめな性格ですが、裕福な環境で育ったマリアとジュリアは、自己中心的で華やかさを求める傾向があります。こうした対比は、物語が進むにつれて、恋愛や結婚、社会における女性の立場といったテーマを浮かび上がらせる役割も担っています。
また、バートラム家の長男トムと次男エドマンドも対照的な人物です。トムは放蕩的で責任感に欠ける一方、エドマンドは真面目で思慮深い性格です。彼らの対比は、当時の社会における階級や責任、道徳観といったテーマを反映しています。
アイロニーと風刺
オースティンは、『マンスフィールド・パーク』において、アイロニーと風刺を効果的に用いることで、当時の社会の慣習や人間関係の滑稽さを浮き彫りにしています。
例えば、バートラム夫人は、常に上品で礼儀正しい振る舞いを心がけていますが、実際には自己中心的で周囲の人々に対する配慮に欠けています。彼女の言動は、しばしば読者に滑稽な印象を与え、上流階級の偽善性を風刺的に描き出しています。
また、マンスフィールド・パークで行われた演劇の練習は、登場人物たちの虚栄心や恋愛模様を露呈させる役割を果たすと同時に、当時の上流階級の娯楽に対する風刺ともなっています。
このように、オースティンは、登場人物たちの言動や物語の展開にアイロニーと風刺を巧みに織り交ぜることで、当時の社会に対する鋭い批評を展開しています。