## オーウェルのカタロニア賛歌が扱う社会問題
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全体主義の脅威
『カタロニア賛歌』は、全体主義がもたらす恐怖と抑圧を如実に描き出しています。オーウェルは、スペイン内戦時、共和国陣営内部でさえ、スターリン主義の影響下にある共産党が、他の左派勢力を容赦なく弾圧していく様を目撃します。
プロパガンダによって真実が歪められ、歴史が改竄されていく様や、恐怖による支配、密告の横行など、全体主義社会の特徴が克明に描かれています。これは、当時のソ連だけでなく、ファシズムなど、あらゆる全体主義体制への警告として受け止められます。
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戦争の不条理さ
オーウェルは、内戦の現実をありのままに描写することで、戦争の不条理さを浮き彫りにします。兵士としての生活は、退屈な塹壕戦と、突発的な暴力に支配され、理想やイデオロギーとはかけ離れたものでした。
彼は、前線での戦闘よりも、むしろ、味方同士の内部抗争の醜悪さに衝撃を受けます。本来、共通の敵と戦うべき同志が、イデオロギーの違いによって対立し、殺し合うという現実は、戦争の空虚さを際立たせます。
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革命の矛盾
『カタロニア賛歌』は、革命が孕む矛盾をも明らかにしています。当初、オーウェルは、スペイン内戦を、ファシズムに対する、理想に燃えた闘いだと信じていました。
しかし、現実の革命は、彼の理想とは大きくかけ離れたものでした。権力闘争、裏切り、暴力、そして、自由と平等を掲げながら、全体主義に傾倒していく革命運動の姿は、彼に深い失望感を与えます。