オルテガの大衆の反逆を読んだ後に読むべき本
ハンナ・アーレント著 全体主義の起源
オルテガの「大衆の反逆」は、20世紀初頭のヨーロッパにおける大衆社会の台頭を鋭く批判した古典であり、大衆の無教養化やエリート層の没落に対するオルテガの危機感は、現代社会にも通じる問題提起を含んでいます。
ハンナ・アーレントの「全体主義の起源」は、ナチズムとスターリニズムという20世紀の全体主義体制の起源、本質、そしてその恐怖を、歴史的、政治的、そして哲学的な観点から分析した記念碑的な著作です。オルテガが危惧した大衆社会の危険性は、アーレントの全体主義分析においても重要な要素として浮かび上がってきます。
アーレントは、全体主義を単なる政治体制ではなく、社会のあらゆる側面を支配し、人間の多元性と自由を根底から破壊する、まったく新しいタイプの支配形態として捉えました。そして、その発生要因の一つとして、孤立化し、思考力を失った大衆の存在を指摘しています。アーレントによれば、伝統的な社会的な絆や価値観が崩壊していく中で、人々は孤独と不安にさいなまれ、容易に全体主義のイデオロギーに魅了されていくことになります。
「大衆の反逆」と「全体主義の起源」は、時代も文脈も異なりますが、共通して大衆社会の負の側面とそれが孕む危険性を鋭く指摘しています。オルテガの分析は、大衆文化の隆盛やエリート層の没落といった社会現象に焦点を当てているのに対し、アーレントは、全体主義という具体的な政治体制と大衆社会との関連性を深く掘り下げています。
「全体主義の起源」を読むことで、オルテガが「大衆の反逆」で提起した問題意識が、20世紀の全体主義という悲劇とどのように結びついているのかをより深く理解することができます。また、現代社会におけるポピュリズムの台頭やインターネット上の情報操作といった現象を分析する上でも、両者の洞察は重要な示唆を与えてくれるでしょう。