オルテガの大衆の反逆が扱う社会問題
専門性の軽視
オルテガは、大衆社会においては専門知識や技能が軽視される傾向があると指摘します。
専門家は、特定の分野に深く精通しているからこそ、その分野における問題点や改善策を的確に把握することができます。
しかし、大衆社会では、誰もが簡単に情報発信できるようになり、専門家の意見と素人意見の区別がつきにくくなっています。
そのため、専門家の意見は軽視され、根拠の乏しい意見や感情論がまかり通ってしまう危険性があります。
画一化と自由の逆説
オルテガは大衆社会の台頭を「人間の画一化」と結びつけて批判します。
大衆社会では、マスメディアの影響力が増大し、人々の価値観やライフスタイルが画一的になる傾向があります。
これは一見、自由で平等な社会のように見えますが、オルテガは、個性を失い、画一的な価値観に支配されることは真の自由ではないと主張します。
そして、大衆社会における自由とは、単に「他人に干渉されない自由」という消極的なものに過ぎず、
自らの頭で考え、主体的に行動する「積極的な自由」が失われていると批判します。
大衆の政治参加と政治の質の低下
オルテガは、大衆の政治参加が必ずしも良い結果をもたらすわけではないと警告しています。
政治は複雑な問題を扱うものであり、専門的な知識や経験が必要です。
しかし、大衆は政治に対する知識や関心が低く、感情的な論理や短絡的な思考に陥りやすい傾向があります。
そのため、大衆の意見に迎合するようなポピュリズム的な政治が横行し、政治の質が低下する危険性があります。
文化の衰退
オルテガは、大衆社会の台頭によって、文化が衰退していくことを危惧しています。
芸術や文学などの文化は、一部の優れた才能を持つ人間によって創造されてきました。
しかし、大衆社会では、文化は「消費」の対象となり、大衆受けするような単純化されたものが求められるようになります。
その結果、真に価値のある文化は軽視され、衰退していくとオルテガは批判します。