## オリーンの貿易理論「地域および国際貿易」の対称性
オリーンの貿易理論における要素賦存量の対称性
オリーンの貿易理論は、ヘクシャー＝オリーンの定理（H-O定理）とも呼ばれ、各国が相対的に豊富に保有する生産要素に依存して比較優位が生じ、貿易が行われると説明しています。
この理論において、要素賦存量の「対称性」はいくつかの側面から考察することができます。
生産要素の対称性
H-O定理は、労働と資本という二つの生産要素を想定し、各国がこれらの要素を異なる比率で保有していると仮定します。
例えば、ある国が労働集約的な生産要素を多く保有し、別の国が資本集約的な生産要素を多く保有している場合、それぞれの国は自国に豊富に存在する生産要素をより多く使用する財の生産に比較優位を持ちます。
しかし、現実の世界では、生産要素は労働と資本だけに限定されず、土地、技術、天然資源など多岐にわたります。 このような多様な生産要素を考慮した場合、H-O定理の前提となる要素賦存量の対称性は崩れ、貿易パターンはより複雑になります。
国家間の対称性
H-O定理は、2国間貿易を前提としていますが、現実の世界では多数の国々が複雑な貿易関係で結ばれています。 多国間貿易においては、ある国が特定の財について複数の国と比較優位を持つ場合や、複数の国から輸入し、複数の国に輸出するといった状況も起こりえます。
このように、多数国間貿易を考慮すると、H-O定理が前提とする国家間の対称性も現実を完全に反映しているとは言えません。
その他の要素
上記以外にも、輸送費、規模の経済、技術進歩、政府の政策などの要素が貿易パターンに影響を与えるため、H-O定理が示す要素賦存量に基づく対称性は限定的なものとなります。