オットーの聖なるものを読む
ルドルフ・オットーの主著を読むにあたって
ルドルフ・オットーの『聖なるもの』は、宗教現象学の古典として広く知られていますが、その難解さゆえに、読解には一定の覚悟と準備が必要です。本稿では、『聖なるもの』を読む上で特に留意すべき点について、いくつかの観点から詳しく解説していきます。
1.翻訳の違いを意識する
『聖なるもの』は、原著であるドイツ語版の他に、複数の言語に翻訳されています。日本語訳も複数存在しますが、翻訳者によって訳語や解釈が異なる場合があります。例えば、オットーの重要な概念である「ヌミノーゼ」は、「聖なるもの」と訳されることもあれば、「聖なる」と訳されることもあります。このような翻訳の違いは、読解に影響を与える可能性があるため、注意が必要です。出来れば、複数の翻訳を見比べてみることをお勧めします。
2. key words を理解する
オットーの思想を理解するためには、彼が用いる key words の意味を正確に把握することが不可欠です。特に重要なのは、「ヌミノーゼ」「神秘的」「畏怖」「魅惑」といった言葉です。これらの言葉は、日常会話でも用いられますが、オットーは独自の文脈で用いているため、辞書的な意味にとらわれずに、文脈の中で理解することが重要です。
3. 宗教現象学という視点
オットーは、『聖なるもの』において、宗教現象学という方法を用いて、宗教経験の本質に迫ろうとしました。宗教現象学とは、特定の宗教教義や歴史的な背景にとらわれずに、宗教経験そのものを記述し、分析しようとする学問です。オットーは、「聖なるもの」という概念を軸に、様々な宗教における共通の体験を浮き彫りにしようとしました。
4. 豊富な具体例
『聖なるもの』の特徴の一つに、具体的な事例の多さが挙げられます。オットーは、聖書や古代宗教の文献、民俗学的な資料などを幅広く参照し、人間の宗教体験を具体的に描き出しています。これらの具体例は、抽象的な議論を理解する上で助けとなるだけでなく、宗教に対する理解を深める上でも役立ちます。