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エールリヒの法社会学基礎論の思想的背景

エールリヒの法社会学基礎論の思想的背景

1. 社会学的方法論の影響

エールリヒの法社会学基礎論は、当時のドイツ社会学、とりわけ以下の二つの潮流から大きな影響を受けています。

まず、ヴィルヘルム・ディルタイやハインリヒ・リッカートらによって提唱された**理解社会学**です。理解社会学は、自然科学的方法ではなく、人間の精神や文化を「理解」することを通じて社会現象を解明しようとする立場です。エールリヒは、法もまた社会における人間の精神活動の産物として捉え、法の背後にある意味や価値を理解することの重要性を強調しました。

もう一つの影響源は、フェルディナント・テンニースやゲオルク・ジンメルらが代表する**形式社会学**です。形式社会学は、社会現象を抽象的な概念を用いて形式的に分析することを重視します。エールリヒは、法現象を社会における相互作用の形式として捉え、法の類型化や発展法則の解明を試みました。

2. 歴史法学の影響

エールリヒは、当時のドイツで主流であった**歴史法学**からの影響も強く受けていました。歴史法学は、法を不変の自然法ではなく、歴史的に形成された民族の精神的産物と捉える立場です。

歴史法学の代表的人物であるフリードリヒ・カール・フォン・サヴィニーは、法典編纂に反対し、民族の法感情に根ざした法の自然発生的な発展を重視しました。エールリヒもまた、法の源泉を条文や判例ではなく、社会における現実の行動規範である「生ける法」に求めました。彼は、法は国家によって制定されるものだけでなく、社会の様々な集団の中で自然発生的に形成される側面も持っていると考えたのです。

3. 法実証主義への批判

エールリヒの法社会学は、当時の法学の主流であった**法実証主義**に対する批判として展開されました。法実証主義は、法を国家によって制定された法規範と捉え、その内容や正しさは問わず、形式的な妥当性のみを重視します。

エールリヒは、法実証主義が法の社会的な側面を軽視していると批判しました。彼は、法を単なる国家の命令と捉えるのではなく、社会における現実の行動規範として捉え、法の形成や作用における社会の役割を明らかにしようとしました。

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