## エールリヒの法社会学基礎論の対極
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法実証主義
を代表する作品群
エールリヒの「法社会学基礎論」は、法を社会現象として捉え、社会生活における法の現実的な機能と作用を重視する立場から書かれています。これは、法を国家の命令と捉え、その論理的な体系性を重視する法実証主義とは対照的な見解です。
法実証主義の代表的な作品としては、以下のようなものが挙げられます。
* **ジョン・オースティン「法体系の講義」**: オースティンは、法を主権者の命令として定義し、命令、制裁、義務の概念を用いて法体系を説明しました。彼の理論は、法の発生源とその強制力に焦点を当て、社会における法の役割や機能にはあまり関心を示していませんでした。
* **ハンス・ケルゼン「純粋法学」**: ケルゼンは、法を規範の体系として捉え、「Sein」 (存在) と「Sollen」 (当為) を厳格に区別することで、法を道徳や社会学といった他の領域から独立させようとしました。彼は、法の妥当性は、上位の規範によって与えられるのであり、最終的には「Grundnorm」(基本規範)にまで遡ると主張しました。
これらの作品は、法を社会から切り離して、その内部構造や論理的な整合性に焦点を当てている点で、エールリヒの「法社会学基礎論」と対極をなしています。エールリヒは、法典に書かれた条文だけでは現実の法生活を理解することはできず、社会における法の現実の作用や機能を分析することが重要だと主張しました。
法実証主義は、法の明確な定義と体系性を提供することで、法の予測可能性と安定性を高めることに貢献してきました。一方、社会の実態から乖離した法は、その実効性を失い、社会に不適合を起こす可能性も孕んでいます。エールリヒの法社会学は、法実証主義に対するアンチテーゼとして、法の社会的な側面を強調することで、法の現実への適合性を高めようとする試みと言えるでしょう。