## エールリヒの法社会学基礎論の主題
社会における法の現実的な機能と作用
オイゲン・エールリヒは、20世紀初に活躍したオーストリアの法学者であり、「法社会学の父」と呼ばれています。彼の主著『法社会学の基礎論』（1913年）は、それまでの法学の主流であった法実証主義を批判し、社会における法の現実的な機能と作用を明らかにしようとした画期的な著作でした。
法の「社会の中での生ける法」としての捉え方
エールリヒは、法を条文や判例といった国家によって制定・解釈される形式的なものとして捉えるのではなく、社会の中で人々の行動を規律し、秩序を維持するために実際に機能している「生ける法」として捉えることの重要性を説きました。彼はこの「生ける法」を「社会生活の事実そのもの」とみなし、法の真の源泉は国家ではなく社会にあると主張しました。
法多元主義：国家法以外の法の存在
エールリヒは、社会には国家法以外にも、商取引における商慣習法や、労働組合や同業者組合といった団体内の規範など、様々な社会集団が独自の規範を持っていることを指摘し、これを「法多元主義」と呼びました。彼は、これらの規範もまた、人々の行動を規律し、社会秩序を維持する上で重要な役割を果たしており、国家法と同様に「法」として認識されるべきであると主張しました。
法社会学の提唱：法の社会学的分析
エールリヒは、このような社会における法の現実の姿を明らかにするためには、法学は社会学的な視点を取り入れる必要があると主張し、法社会学という新しい学問分野を提唱しました。彼は、法社会学の課題として、社会における法の形成過程、法の作用、法の有効性などを実証的に研究することを挙げました。