## エーコの薔薇の名前の世界
### 1327年のイタリア北部
物語の舞台は、1327年のイタリア北部の山奥にある、実在しないベネディクト会修道院です。当時、教皇庁はアヴィニョン捕囚の時代であり、ローマではなくフランスのアヴィニョンにありました。
### 修道院という小宇宙
この修道院は、当時のヨーロッパ社会の縮図とも言える場所です。そこには、信仰、知識、権力、陰謀などが複雑に絡み合っています。登場人物たちは、それぞれ異なる思想、立場、過去を持ち、物語が進むにつれて、彼らの関係は変化し、深まっていきます。
### 写本と迷宮図書館
修道院の中心には、ヨーロッパ最大の蔵書数を誇る迷宮のような図書館が存在します。そこには、古代ギリシャの文献や、異端とされる書物など、禁断の知識が眠っています。図書館は、物語の重要な舞台となり、そこで起こる不可解な事件が、登場人物たちを巻き込んでいきます。
### アリストテレスの「詩学」第二巻
物語の重要な鍵となるのが、古代ギリシャの哲学者アリストテレスの「詩学」第二巻です。この書物は、喜劇論を扱っているとされ、修道院では禁書とされています。登場人物たちの間では、この書物が存在すること自体が、大きな波紋を広げていきます。
### ウィリアム・バスカヴィルとアドソ・フォン・メルク
物語は、フランシスコ会修道士ウィリアム・バスカヴィルと、彼の弟子である若い修道士アドソ・フォン・メルクの視点から語られます。ウィリアムは、鋭い観察力と推理力を持つ人物で、シャーロック・ホームズのモデルとも言われています。アドソは、経験不足ながらも、師であるウィリアムを支えながら、事件の真相に迫っていきます。