## エーコのボードリーノを読む前に
ボードリーノを読む前に知っておくべきこと
ウンベルト・エーコは、記号論、中世史、文学理論などの分野で著名なイタリアの学者であり、作家でもありました。彼の小説は、複雑なプロット、歴史的な内容、哲学的な考察、メタフィクションの要素で知られています。特に「薔薇の名前」は、その知的でサスペンスフルなストーリーで世界的なベストセラーとなり、エーコの名声を不動のものとしました。
ボードリーノの世界観と時代背景
「ボードリーノ」は、12世紀から13世紀にかけての十字軍遠征と、コンスタンティノープルを舞台に繰り広げられる歴史小説です。主人公のボードリーノは、才気煥発でありながら、虚言癖のある語り部という複雑な人物として描かれています。彼は、歴史的な出来事や人物を織り交ぜながら、自身の冒険譚を語っていきます。
エーコ作品の特徴:知の迷宮への招待
エーコの小説は、読者を“知の迷宮”へと誘うことで知られています。特に「ボードリーノ」では、歴史的事実とボードリーノの創作が複雑に絡み合い、何が真実で何が虚構なのかを見極めるのが困難な場合があります。これは、エーコが意図的に仕掛けている“ゲーム”と言えるでしょう。読者は、作中に散りばめられた歴史、神話、文学、宗教などの断片をパズルのように組み立てながら、物語の深層に迫っていくことになります。
読書体験を豊かにするための予備知識
「ボードリーノ」をより深く楽しむためには、いくつかの予備知識があると役立ちます。特に、十字軍遠征の歴史、当時の宗教対立、コンスタンティノープルという都市の重要性などについて、事前にある程度理解しておくことをおすすめします。また、作中には聖杯伝説やプレスター・ジョン伝説など、中世ヨーロッパで広く知られていた伝説も登場します。これらの伝説についても、事前に調べておくことで、より一層物語の世界観に没入できるでしょう。