エーコのボードリーノの原点
中世への関心
ウンベルト・エーコは学者として、特に中世記号論の分野において著名な業績を残しました。彼の学術的関心は、小説作品にも色濃く反映されています。「薔薇の名前」をはじめとする作品群は、緻密な歴史考証と複雑な記号体系が特徴であり、エーコの中世への深い造詣が伺えます。
語り手という存在への着目
エーコの小説では、物語の語り手が重要な役割を担うことが多く、「ボードリーノ」もその例外ではありません。歴史の捏造や虚言が横行する世界において、誰が、どのように真実を語るのかという問題は、エーコが繰り返し探求してきたテーマの一つです。
史実と虚構の交錯
「ボードリーノ」は、実在した歴史上の人物や出来事を題材としながらも、大胆なフィクションを織り交ぜた作品です。エーコは、歴史とは客観的な事実の記録ではなく、解釈や想像によって構築されるものであることを示唆しています。
東方世界への憧憬
中世ヨーロッパにおいて、東洋は未知の文化や富にあふれた場所として、人々の憧れの的でした。「ボードリーノ」に登場するプレスター・ジョン王国の物語は、当時のヨーロッパ社会における東方世界へのイメージを反映しています。