エーコのボードリーノのテクスト
語り手と語りについて
「ボードリーノ」は一人称視点で語られます。語り手は物語の主人公であるボードリーノであり、彼自身の冒険を回想する形で物語が進行します。ボードリーノは教養のない農民の息子として生まれながら、その機転と口達者さで歴史上の重要な場面に立ち会うことになります。
歴史と虚構の交錯
物語は12世紀から13世紀のヨーロッパを舞台とし、実在した歴史上の人物や出来事が多く登場します。しかし、ボードリーノは自身の体験を誇張して語ることが多く、史実と虚構が入り混じった物語世界が構築されています。 例えば、ボードリーノは神聖ローマ皇帝フリードリヒ1世やビザンツ皇帝イサキオス2世といった実在の人物に仕えたと語りますが、それらのエピソードには多くの脚色が加えられています。
写本と偽造
「ボードリーノ」は写本の文化が栄えた中世を舞台としており、写本作成や偽造といったテーマが重要な役割を果たします。ボードリーノ自身も優れた筆記者であり、偽造文書の作成に手を染める場面も描かれます。 このようなテーマ設定は、歴史の真実や記録の信憑性といった問題を提起するものであり、読者に深い思考を促します。
言語と物語
「ボードリーノ」では、言語そのものが重要なテーマとして扱われています。ボードリーノは言葉巧みに相手を操り、物語を創作することで自己実現を図ろうとします。 彼の語る物語はしばしば現実と虚構の境界線を曖昧にし、言葉が持つ力を浮き彫りにします。