エーコのボードリーノと作者
登場人物と作者の関係性
ウンベルト・エーコは、自身の著作の中で、登場人物と作者の関係性について明確な境界線を引いています。「ボードリーノ」においても、作者は物語の外側に存在し、登場人物たちの思考や行動を直接操作することはありません。
歴史とフィクションの融合
エーコは歴史とフィクションを巧みに融合させる作家として知られていますが、「ボードリーノ」においても、12世紀の史実と架空の物語が複雑に絡み合っています。 ボードリーノの語る物語は、歴史的事実に対する脚色や虚構を多分に含んでおり、読者は何が真実で何が虚構なのかを見極めることが求められます。
語り手と作者の違い
「ボードリーノ」は、主人公ボードリーノによって語られる一人称視点の物語です。
作者であるエーコは、ボードリーノというフィルターを通して物語を展開することで、読者に歴史に対する多角的な視点を提供しています。
メタフィクションの要素
「ボードリーノ」は、物語が創作されるプロセス自体を作品内に取り込むメタフィクションの要素も持ち合わせています。 ボードリーノは自身の経験を物語として語り継ぐことを望んでおり、その過程で虚実が入り混じっていく様子が描かれます。