エンデのモモの分析
モモの登場人物
モモ： 本名は不明。円形劇場に住む、不思議な魅力を持つ少女。 年齢不詳だが、見た目は10歳前後。 ぼさぼさの黒髪と大きな瞳が特徴。 他人の話を聞くことを得意とし、 その才能によって人々の心を癒やし、 問題解決に導く。 物語が進むにつれて、 時間泥棒に対抗する重要な存在となる。
ベッポ通りの掃除夫ベッポ： 年老いた道路清掃員。 モモの友人であり、 彼女に現実的なアドバイスを与える存在。 寡黙だが、 モモに対して深い愛情と信頼を寄せている。 時間泥棒の策略を見抜き、 モモに警告を発する。
ジジ： 本名はジジロニモ。 円形劇場に住む、 話を作るのが得意な少年。 想像力豊かで、 人々を楽しませるために 様々な物語を創作する。 時間泥棒の策略によって、 「時間貯蓄銀行」に 勤めるようになるが、 次第に心を蝕まれていく。
時間泥棒（灰色の男）： 人々の時間を奪う謎の存在。 「時間貯蓄銀行」の職員を名乗り、 人々を言葉巧みに騙して、 時間を節約するように仕向ける。 その正体は、 人間の感情や時間を糧とする 冷酷な存在である。
モモにおける時間の概念
エンデは『モモ』の中で、二つの対照的な時間の概念を描写しています。一つは、人間的な時間、すなわちモモや彼女の友人たちが共有する時間です。これは、人との触れ合い、創造的な活動、自然のサイクルなどを通して経験される、質的で主観的な時間です。
もう一つは、時間泥棒が体現する、機械的で客観的な時間です。これは、効率性や生産性を重視し、数字で計測可能な時間です。時間泥棒は、人々に「時間を節約」させようとしますが、それは実際には、人生の喜びや意味を奪い、空虚な時間に置き換えることを意味します。
モモにおけるテーマ
『モモ』は、現代社会における時間に対する意識、人間の存在意義、そして真の豊かさについて問いかける作品です。
エンデは、時間泥棒という象徴的な存在を通して、資本主義社会における効率性や生産性の追求が、人間の心を蝕み、真の幸福を奪い去る危険性を警告しています。
また、モモの不思議な能力と、彼女を取り巻く人々の心の変化を通して、人間的なつながりや、創造的な活動の重要性を訴えかけています。
『モモ』は、単なる児童文学の枠を超え、現代社会に対する鋭い批判と、人間存在の本質に迫る深いメッセージを含んだ作品として、読み継がれています。