エンデのはてしない物語のテクスト
考察対象となるテクストの範囲
本稿では、ミヒャエル・エンデの児童文学作品「はてしない物語」のテクストについて考察する。具体的には、1979年にドイツで出版された原著”Die unendliche Geschichte”、および、1983年に出版された日本語訳版(上・下巻、岩波書店、谷川俊太郎訳)を考察の対象とする。
物語の構造
「はてしない物語」は、現実世界に住む少年バスチアンが、「はてしない物語」という名の書物を読み進めることで、物語の世界と現実世界が複雑に絡み合いながら展開していく構造を持つ。大きく分けて、現実世界のバスチアンの物語と、「はてしない物語」の世界の物語の二重構造となっている。
現実世界における物語
現実世界では、いじめられっ子で空想好きの少年バスチアンが主人公である。彼は、古書店で「はてしない物語」という書物を盗み出し、学校の屋根裏部屋に隠れて読み始める。バスチアンの現実世界は、両親の不仲や学校での孤立など、孤独や喪失感が色濃く描かれている。
「はてしない物語」の世界
「はてしない物語」の世界では、幼き女王の病気と、「虚無」と呼ばれる謎の勢力によって滅亡の危機に瀕した「ファンタージエン」という国が舞台となる。勇敢な少年戦士アトレーユが、女王を救う唯一の希望である「救済」を求めて冒険の旅に出る。
現実と虚構の交錯
バスチアンは、「はてしない物語」を読み進めるにつれて、物語の世界に没頭していく。そして、物語の登場人物たちの運命に深く感情移入し、ついには物語の世界に介入していくことになる。これは、現実世界と物語の世界の境界線が曖昧になっていく様子を描写しており、読者もまた、バスチアンと同様に物語世界へと引き込まれていくような感覚を覚える。
象徴的なモチーフ
「はてしない物語」には、様々な象徴的なモチーフが登場する。例えば、「虚無」は、現代社会における空虚さや無力感を象徴しているとも解釈できる。また、「救済」は、想像力や創造性によって、現実世界の困難や苦しみを克服することの象徴とも考えられる。
テクスト分析における注意点
「はてしない物語」は、児童文学作品でありながら、哲学的なテーマや複雑な構造を含んでおり、多様な解釈が可能な作品である。そのため、テクスト分析を行う際には、特定の解釈に偏ることなく、作品全体を丁寧に読み解く必要がある。また、エンデ自身の発言や他の作品との関連にも注意を払いながら、考察を進めることが重要である。