エンデの「はてしない物語」の思考の枠組み
ファンタージエンと現実世界の対比
エンデは物語の中で、現実世界と対極をなす幻想世界「ファンタージエン」を創造しました。ファンタージエンは、人間の望みや想像力が具現化した世界であり、現実世界とは全く異なる法則に支配されています。主人公バスチアンは、現実世界の退屈さや孤独から逃れるようにファンタージエンに没頭し、その世界を救う冒険に巻き込まれていきます。
物語の二重構造
「はてしない物語」は、バスチアンが「はてしない物語」という名の物語を読む話と、バスチアンが読んでいる物語そのものという二重構造になっています。この構造によって、読者は現実とファンタジーの境界線があいまいになっていく感覚を味わうことができます。現実世界の出来事がファンタージエンに影響を与え、逆にファンタージエンでの出来事が現実世界のバスチアンに変化をもたらす場面が描かれることで、両者の密接な関係が示唆されます。
想像力の力と危険性
エンデは、「はてしない物語」を通して、人間の想像力が持つ二面性を描き出しています。ファンタージエンは想像力の産物ですが、同時に想像力が暴走すると、現実世界に悪影響を及ぼす可能性も秘めていることが示唆されています。物語の中で、ファンタージエンは「虚無」と呼ばれる存在によって徐々に蝕まれていきます。この「虚無」は、現実世界の人々の想像力の衰退を象徴しており、エンデは想像力の重要性を訴えかけると同時に、その使い方次第では危険な側面も持ち合わせていることを警告しています。