## エンゲルスの空想から科学へ
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概要
「空想から科学へ」は、フリードリヒ・エンゲルスが1880年に執筆した著作です。原題は「自然弁証法のために」とされており、エンゲルの死後1896年に初めて出版されました。本書は、古代ギリシャの自然哲学から19世紀の唯物論に至るまでの自然科学の歴史を、弁証法的な唯物論の観点から解釈し、自然科学における唯物論の優位性を主張することを目的としています。
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内容
本書は、大きく分けて以下の三つの部分から構成されています。
1. **古代ギリシャの自然哲学**: エンゲルスは、デモクリトスの原子論を取り上げ、古代ギリシャにおいてすでに唯物論的な自然観が存在していたことを指摘します。
2. **中世から近代の自然科学**: エンゲルスは、コペルニクス、ケプラー、ガリレオ、ニュートンといった自然科学者たちの業績を概観し、彼らが宗教的な世界観から脱却し、自然を法則に基づいて説明しようとしたことを評価します。
3. **19世紀の自然科学**: エンゲルスは、自身の時代における自然科学の進歩、特にエネルギー保存の法則や細胞説といった発見に注目し、これらの発見が唯物論的な世界観を支持していると主張します。
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特徴
本書は、エンゲルスが自然科学を研究した成果をまとめたものであり、彼の自然観や科学観を理解する上で重要な著作です。本書の特徴としては、以下のような点が挙げられます。
* **弁証法的な視点**: エンゲルスは、自然を静的なものではなく、絶えず運動し変化するものであると捉え、弁証法的な方法を用いて自然を理解しようとしました。
* **唯物論的な立場**: エンゲルスは、自然界の現象を物質の運動によって説明し、精神や意識を物質から派生したものとみなす唯物論的な立場をとっています。
* **歴史的な視点**: エンゲルスは、自然科学を歴史的な発展の過程として捉え、過去の自然科学者たちの業績を評価しながら、現代の自然科学の課題を明らかにしようとしました。
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影響
「空想から科学へ」は、マルクス主義の自然観に大きな影響を与え、20世紀のソビエト連邦などでは、公式な自然科学の教科書として用いられていました。しかし、本書で展開されている自然科学の解釈には、現代の科学の知見から見ると、誤りや時代遅れな部分も含まれているという指摘もあります。