## エンゲルスの空想から科学への表現
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表現について
エンゲルスが1883年に出版した「空想から科学へ」という著作のタイトルには、社会主義の思想的変遷を表す表現が用いられています。この表現は、初期の社会主義がユートピア的な「空想」に基づいていたのに対し、マルクスとエンゲルスが提唱した「科学的社会主義」は、唯物史観に基づいた歴史と社会の「科学的」な分析の上に成り立っているという主張を表しています。
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「空想」とは
エンゲルスは、「空想」という言葉を用いて、サン=シモン、フーリエ、オーウェンといった初期社会主義者を批判的に指しています。これらの思想家は、資本主義社会の矛盾や不平等を鋭く批判し、より平等で公正な社会の実現を構想しました。しかしエンゲルスは、彼らの構想は実現可能性や具体的な方法に欠け、理想的な社会のあり方を描いた「空想」の域にとどまっていると見なしました。
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「科学」とは
一方、「科学」という言葉は、マルクスとエンゲルスが発展させた唯物史観に基づいた歴史と社会の分析方法を指しています。唯物史観は、物質的な生産様式が社会構造や思想を規定するという考え方であり、エンゲルスはこれを歴史を貫く普遍的な法則として捉えました。
エンゲルスは、唯物史観に基づいて資本主義社会を分析し、資本主義社会が内包する矛盾が必然的にプロレタリア革命と社会主義社会の実現をもたらすと主張しました。彼が「科学的社会主義」と呼ぶ所以は、この主張が歴史の必然性に基づいた「科学的」な分析の結果であるという点にあります。