## エンゲルスの空想から科学への価値
エンゲルスの主張と歴史的背景
「空想から科学へ」は、フリードリヒ・エンゲルスが1880年に発表した著作です。この著作でエンゲルスは、18世紀後半から19世紀にかけての社会主義思想の発展を、ユートピア的な「空想」から科学的な「社会主義」への移行として描きました。
空想的な社会主義
エンゲルスは、サン・シモン、フーリエ、オーウェンなどを「空想的な社会主義者」として分類しました。彼らに共通するのは、資本主義社会の矛盾を批判し、理性や道徳に基づいた理想社会を構想した点です。しかし、エンゲルスは、彼らの構想が社会変革の具体的な方法や、階級闘争の重要性を欠いた「空想」の域を出ないと批判しました。
科学的な社会主義
エンゲルスは、マルクスと共に創始した「科学的な社会主義」こそが、歴史の発展法則を明らかにし、資本主義社会の必然的な崩壊と、その後に到来する社会主義社会の実現を科学的に証明するものだと主張しました。彼によれば、社会主義は空想ではなく、歴史の必然として実現されるものです。
唯物史観と階級闘争
「科学的な社会主義」の根幹をなすのが、唯物史観と階級闘争の概念です。唯物史観は、人間社会の発展を物質的な生産様式によって規定される経済的過程として捉えます。階級闘争は、異なる経済的地位を持つ階級間の対立を指し、歴史の進歩の原動力となるとされます。
影響と評価
「空想から科学へ」は、マルクス主義の古典的なテキストとして、社会主義運動に多大な影響を与えました。しかし、その主張は、歴史決定論や階級闘争の絶対化といった批判も受けています。