## エンゲルスの空想から科学へに関連する歴史上の事件
エンゲルスが1878年に発表した『空想から科学へ』は、社会主義思想の歴史における重要な著作として知られています。この著作は、社会主義がユートピア的な空想から、唯物史観に基づいた科学へと発展した過程を論じたものでした。本書は、エンゲルスの思想形成過程における重要な著作であると同時に、マルクスとエンゲルスが共同で築き上げた唯物史観を体系的に解説した著作としても高く評価されています。
エンゲルスの思想形成と『空想から科学へ』の関係
エンゲルスは、1820年にプロイセン王国(現在のドイツ)の裕福な繊維工場経営者の家に生まれました。若い頃はヘーゲル哲学に傾倒していましたが、後にその理想主義的な側面に疑問を抱き始めます。
転機となったのは、1842年にイギリス・マンチェスターに移住し、そこで資本主義の現実を目の当たりにしたことでした。貧困と労働者の悲惨な状況を目の当たりにしたエンゲルスは、社会の矛盾を克服するためには、現実的な分析と解決策が必要だと痛感します。
この経験を通してエンゲルスは、唯物論やフランスの社会主義思想に影響を受け、やがて生涯の盟友となるマルクスと出会います。二人は共同で、唯物史観と呼ばれる新しい歴史観に基づいた社会主義理論の構築に取り組み始めます。
『空想から科学へ』は、エンゲルスがこうした思想的な変遷を経て、唯物史観に基づいた社会主義理論を体系的にまとめた著作です。本書でエンゲルスは、それまでの社会主義思想を「空想的社会主義」と批判的に総括し、唯物史観に基づいた「科学的社会主義」こそが、社会の矛盾を解決する道筋を示すものであると主張しました。
『空想から科学へ』の内容と歴史的意義
『空想から科学へ』では、まずサン=シモン、フーリエ、オーウェンといった初期の社会主義思想家たちの思想が紹介されます。エンゲルスは彼らの思想を高く評価しつつも、階級闘争の必要性や、資本主義社会の構造的な問題点に対する分析が欠如していると批判します。
そして、唯物史観に基づいた「科学的社会主義」こそが、こうした問題点を克服し、真の社会変革を実現するための理論であると主張します。唯物史観では、人間社会の歴史は、生産力と生産関係の矛盾によって発展してきたとされます。資本主義社会におけるこの矛盾は、資本家階級と労働者階級の対立という形で現れており、最終的には労働者階級による革命によって解決されると考えます。
『空想から科学へ』は、唯物史観をわかりやすく解説した入門書として、広く読まれるようになりました。 社会主義運動に大きな影響を与え、社会主義思想の普及に貢献しました。また、資本主義社会に対する批判的な視点を提供し、社会問題や歴史に対する人々の考え方にも影響を与えたと言えるでしょう。