## エリオットの「ダニエル・デロンダ」とアートとの関係
ダニエル・デロンダにおける芸術の描写
「ダニエル・デロンダ」では、絵画、彫刻、音楽、建築など、様々な芸術形式が描かれています。 エリオットはこれらの芸術形式を物語の背景や雰囲気作りだけでなく、登場人物の心情や成長、社会的な階級や文化の違いなどを表現する手段としても用いています。
絵画と彫刻：美的感覚と道徳観
絵画と彫刻は、作中人物の美的感覚や道徳観を反映する重要なモチーフとして登場します。 グウェンドレンは美的感覚に優れ、美術品に囲まれた生活にあこがれますが、一方でその価値観は表面的なものに留まっています。 対照的に、ミラは宗教画に深い精神性を見出し、内面的な美しさを追求します。 また、ダニエルはローマを訪れた際に、ルネサンス期の巨匠たちの作品に感銘を受け、自身のルーツと向き合うことになります。
音楽：感情の表現と人間関係の象徴
音楽は、登場人物の感情の動きや人間関係を象徴的に表現する役割を担っています。 グウェンドレンはピアノ演奏を社交の場における自己表現の手段として捉えていますが、彼女の演奏はしばしば空虚で、周囲の人々に真の感動を与えることはありません。 一方で、ミラは心からの敬虔な思いを込めて教会のオルガンを演奏し、周囲の人々に深い感動を与えます。
建築：社会構造と歴史の重み
作中には、イギリスの田園風景や邸宅、イタリアの教会や宮殿など、様々な建築物が登場します。 これらの建築物は、当時の社会構造や歴史の重みを象徴すると同時に、登場人物たちの行動や心理に影響を与えています。 例えば、グランドコート家は代々続く由緒正しい家柄であり、その邸宅は彼らの社会的地位の高さを象徴しています。 一方で、ダニエルは自身の出自の謎に翻弄され、古代ローマの遺跡に自分自身のルーツを重ね合わせます。