## エリアーデの聖と俗の秘密
エリアーデの主張
ルーマニア出身の宗教史学者ミルチャ・エリアーデは、その著書『聖と俗』の中で、宗教的な経験、特に「聖なるもの」の顕現と経験が、人間存在と世界の理解において根本的な役割を果たしていると主張しました。彼は、伝統的な社会において、世界は「聖なる空間」と「俗なる空間」の二元論的に捉えられていると論じました。
聖なる空間
エリアーデによれば、「聖なる空間」は、超越的な力や存在が顕現する場所であり、時間や歴史を超越した絶対的な現実を体現しています。それは、神々や精霊の居住地、あるいは神話や宗教的な出来事が起こった場所として認識されます。聖なる空間は、人々に畏怖、畏敬の念、そして再生の感覚を呼び起こすとされます。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
* 聖域、寺院、神社
* 聖なる山、森、川
* 祖先の墓、記念碑
俗なる空間
一方、「俗なる空間」は、聖なる空間とは対照的に、日常的で、均質で、歴史的な時間に支配された場所です。それは、人々が日常生活を送る場所であり、聖なる空間のような超越的な意味や価値観を持ちません。
聖なるものの顕現
エリアーデは、聖なるものが俗なる世界に現れることを「ヒエロファニー」と呼びました。ヒエロファニーは、人々に聖なるものの存在を認識させ、世界に秩序と意味をもたらすとされます。
ヒエロファニーは、以下のような形で現れることがあります。
* 自然現象：雷、地震、日食など
* 動植物：特定の種類の木、動物、鳥など
* 人工物：偶像、寺院、祭壇など
聖と俗の相互作用
エリアーデは、聖なる空間と俗なる空間は完全に分離されたものではなく、相互に影響を与え合っていると論じました。人々は、聖なる空間で行われる儀式や祭祀を通して、聖なるものの力にあずかり、俗なる空間での生活に意味と秩序をもたらそうとします。
現代社会における聖と俗
エリアーデは、現代社会においては、聖なるものに対する感覚が失われつつあり、世界が脱聖化していると主張しました。しかし、彼は、現代人の中にも、聖なるものを求める欲求は根強く存在しており、それは芸術、文学、スポーツなどの様々な形で表現されているとも述べています。