エラスムスの痴愚神礼讃の読者
エラスムスが想定した読者層は?
エラスムスは「痴愚神礼讃」をラテン語で執筆しました。これは当時の知識人、聖職者、貴族など、高等教育を受けた層を主な読者として想定していたことを示唆しています。実際、エラスムスは親しい友人に宛てた手紙の中で、本書を「学者たちの遊び」と表現しており、高度な教養を持つ読者を念頭に置いていたことがうかがえます。
しかし、当時の社会状況を考えると、「痴愚神礼讃」は一般大衆にも少なからず影響を与えた可能性があります。印刷技術の発展により、本書は広く複製され、様々な言語に翻訳されました。そのため、ラテン語を読めない人々も、口頭伝承や翻訳を通じて、エラスムスの風刺に触れる機会を得ていたと考えられます。
読者の反応はどうだったのか?
「痴愚神礼讃」は出版当時から大きな反響を呼びました。一部の知識人からは、その痛烈な風刺とウィットに富んだ表現が賞賛されました。一方、教会関係者の中には、その内容を冒涜的だと非難する者もいました。エラスムス自身、本書が物議を醸すことを予想しており、実際に宗教改革の導火線の一つになったとも言われています。
しかし、「痴愚神礼讃」に対する読者の反応を具体的に示す史料は限られています。当時の書簡や記録は断片的であり、読者の属性や反応を網羅的に把握することは困難です。