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ウルフの『ダロウェイ夫人』の思考の枠組み

## ウルフの『ダロウェイ夫人』の思考の枠組み

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意識の流れ

『ダロウェイ夫人』は、登場人物たちの意識の流れを通じて物語が展開されるのが大きな特徴です。ウルフは、伝統的な小説の形式である、時系列に沿った客観的な描写や説明を避け、登場人物たちの心の内側に直接入り込み、思考や感情、記憶を断片的に、しかし鮮やかに描き出していきます。

読者は、クラリッサ・ダロウェイやセプティマス・ウォーレン・スミスといった登場人物たちの心の動きを、まるで川の流れのように、途切れることなく追体験することになります。彼らの意識は、現在と過去、現実と想像、そして自意識と他者意識の間を行き来し、複雑に入り組んでいきます。

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自由連想

ウルフは、登場人物たちの意識の流れを表現するために、自由連想法を効果的に用いています。ある些細な出来事や感覚、言葉などがきっかけとなり、登場人物たちの意識は、一見無関係に見える過去の記憶や思考へと飛躍していきます。

例えば、ダロウェイ夫人がパーティーの準備をしている時、バラの香りを感じたことで、彼女は若い頃の恋人、ピーターとの夏の記憶に引き戻されます。このように、自由連想によって、登場人物たちの内面世界が徐々に明らかになっていきます。

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時間の非線形性

ウルフは、『ダロウェイ夫人』において、客観的な時間ではなく、登場人物たちの主観的な時間軸を採用しています。彼らの意識は、現在にとどまることなく、過去や未来へと自由に行き来します。

過去は、現在の人物たちの行動や感情に影響を与え、未来への不安や期待が、現在の瞬間を彩ります。ウルフは、このような時間の非線形性を表現することで、人間の意識体験の本質に迫ろうとしました。

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