## ウィルソンの社会生物学の原点
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動物行動学の影響
エドワード・O・ウィルソンは、社会生物学の着想において、動物行動学、特にコンラート・ローレンツとニコ・ティンバーゲンの研究から大きな影響を受けました。ローレンツの動物の生得的な行動パターンに関する研究や、ティンバーゲンの動物行動の四つの問い(機能、メカニズム、発達、進化)は、ウィルソンの社会生物学の基盤となる概念を提供しました。ウィルソンは、動物行動学の手法と理論を人間を含むすべての動物の社会行動に適用しようとしました。
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集団遺伝学と進化生物学の統合
ウィルソンの社会生物学は、動物の社会行動を進化生物学の観点から説明することを目指しました。彼は、W.D.ハミルトンの血縁選択説を社会行動の進化を理解するための重要な鍵と考えました。血縁選択説は、個体が血縁者に利他的な行動をとることを進化的に説明するもので、ウィルソンはこれを包括適応度の概念へと発展させました。
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昆虫社会の研究
ウィルソンは、アリの行動生態学の専門家としても知られていました。彼は、アリの社会におけるカースト分化やコミュニケーション、コロニーの形成などの複雑な行動を、進化生物学と遺伝学の観点から分析しました。彼の昆虫社会に関する研究は、社会生物学の理論を構築する上で重要な実証研究となりました。
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「社会生物学:新しい総合」の出版
1975年に出版されたウィルソンの著書「社会生物学:新しい総合」は、社会生物学という学問分野を確立する上で極めて重要な役割を果たしました。この本の中でウィルソンは、動物の社会行動に関する膨大な知見を進化生物学の枠組みで統合し、人間を含むあらゆる生物の社会行動を説明する包括的な理論を提唱しました。