## イプセンのペール・ギュントの発想
イプセン自身の言葉
イプセン自身は、1867年9月12日にフレデリック・ヘーゲル宛ての手紙の中で、「ペール・ギュント」の着想について次のように述べています。
> 本当の主題は、詩と真実の対比ではありません。もっと単純で、いわばより人間的なものです。すなわち、「現代において、個人として存在するとはどういうことか」です。[1]
ノルウェーの民話と伝説の影響
「ペール・ギュント」には、ノルウェーの民話や伝説の要素が色濃く反映されています。特に、山に住む妖精トロールや、山羊の姿をした精霊ボックなどの存在は、ノルウェーの民間伝承に由来するものです。
ロマン主義と現実主義の融合
「ペール・ギュント」は、幻想的な要素や壮大なスケールを持つ一方で、当時の社会や人間の心理を鋭く描写する現実主義的な側面も持ち合わせています。これは、イプセンがロマン主義の影響を受けながらも、現実社会の問題にも目を向けていたことを示しています。
自己実現と責任のテーマ
劇中で、ペール・ギュントは自己中心的で無責任な性格として描かれ、様々な経験を通じて自己実現と責任の重要性に気づいていきます。このテーマは、イプセンが当時の個人主義的な風潮に警鐘を鳴らしていたことを示唆しています。
「ブランド」との対比
「ペール・ギュント」は、前作「ブランド」と対比されることが多い作品です。理想を追い求めて破滅するブランドとは対照的に、ペール・ギュントは現実と理想の間で葛藤する等身大の人間として描かれています。
[1] Henrik Ibsen, *Letters and Speeches*, ed. Evert Sprinchorn (New York: Hill and Wang, 1964), p. 83.