Skip to content Skip to footer

イシグロの忘れられた巨人と人間

## イシグロの忘れられた巨人と人間

人間性の光と影

「忘れられた巨人」は、カズオ・イシグロによって2015年に発表された長編小説です。舞台はアーサー王伝説後の時代設定のブリテン島で、サクソン人とブリトン人が争いを繰り広げています。物語は、老夫婦のアクセルとベアトリスが、霧に包まれた故郷を離れ、息子に会うために旅に出るところから始まります。

記憶と忘却、そして暴力

作中で重要な役割を果たすのが、「霧」というモチーフです。霧は人々の記憶を奪い、過去に何があったのかを曖昧にします。アクセルとベアトリスもまた、自分たちの過去や、互いへの想いの詳細を思い出せません。旅の途中で出会う人々もまた、断片的な記憶しか持たず、過去に何があったのか、なぜ争いが起きているのかを理解していません。

個人の関係性と共同体の真実

読者は、アクセルとベアトリスの旅路を通して、断片的に提示される情報を手掛かりに、彼ら自身の過去や、霧に隠された真実を推測していくことになります。旅の途中で出会うサクソン人戦士ウィスタンや、謎の修道士エドウィンなどの登場人物も、それぞれの視点から物語に複雑な奥行きを与えています。

寓話としての解釈

「忘れられた巨人」は、ファンタジー小説としての体裁を取りながらも、人間の本質、記憶と歴史、愛と憎しみ、復讐と赦しといった普遍的なテーマを扱っています。霧は、個人や社会を覆う無意識や、過去のトラウマ、隠蔽された真実を象徴しているとも解釈できます。読者は、アクセルとベアトリスの旅を通して、人間存在の根源的な問いに向き合うことになるでしょう。

Amazonで購入する

Leave a comment

0.0/5