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イシグロのわたしたちが孤児だったころに関連する歴史上の事件

## イシグロのわたしたちが孤児だったころに関連する歴史上の事件

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日中戦争の影響

『わたしたちが孤児だったころ』は、1930年代の上海租界を舞台に、両親の失踪の謎を追う主人公クリストファー・バンクスの姿を描いています。この時期の中国は、1937年に始まった日中戦争の影に覆われていました。

作中では、戦争の直接的な描写は避けられていますが、その影響は様々な形で現れています。たとえば、主人公が幼少期を過ごした租界は、西洋列強によって支配された地域であり、中国国内の混乱とは一線を画した、いわば「虚構の平和」が保たれていました。しかし、戦争の激化とともに、その安寧も徐々に崩れ去っていきます。

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阿片戦争と租界の成立

上海租界の存在は、19世紀半ばの阿片戦争に端を発します。イギリスが中国に阿片を輸出して巨額の利益を上げていたことに対し、清朝政府は阿片の輸入を禁止しようとしました。これが両国の対立を招き、1840年に阿片戦争が勃発します。

戦争はイギリスの勝利に終わり、清は南京条約など不平等条約を結ばざるを得なくなりました。その結果、上海など中国沿岸部の都市には、治外法権や関税自主権を持つ租界が設けられ、西洋列強による中国支配の象徴となりました。

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中国における西洋列強の思惑

19世紀後半、産業革命によって発展した西洋諸国は、市場と資源を求めて世界進出を加速させていました。広大な領土と豊富な資源を持つ中国は、列強にとって格好の進出先でした。

列強は、軍事力や経済力を背景に中国に圧力をかけ、様々な利権を手に入れていきます。その過程で、中国国内は混乱を極め、人々の生活は大きな影響を受けました。作中、主人公の両親が巻き込まれた事件も、そうした時代背景と無関係ではありません。

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記憶と歴史の曖昧さ

『わたしたちが孤児だったころ』は、歴史の大きなうねりと、その中で翻弄される人々の姿を、ミステリーという形式を借りて描き出した作品です。

作中では、主人公自身の記憶の曖昧さと、歴史の不確かさが重なり合い、何が真実なのかが分からなくなっていきます。これは、過去の出来事を正確に記録し、後世に伝えることの難しさを示唆しているのかもしれません。

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