Skip to content Skip to footer

イシグロの『忘れられた巨人』と言語

## イシグロの『忘れられた巨人』と言語

###

記憶と忘却

『忘れられた巨人』は、霧に包まれたポスト・アーサー王時代のイギリスを舞台に、記憶と忘却というテーマを深く掘り下げています。作中では、人々は謎の霧の影響で過去の記憶を失いつつあります。主人公の老夫婦、アクセルとベアトリスもまた、自分たちの過去が曖昧になっています。

彼らは自分たちの息子に会うために、霧に覆われた危険な旅に出発します。道中、彼らは様々な人物と出会い、過去の断片を垣間見ながら、自分たちの関係、そして自分たちの民族が犯した過去の罪と向き合っていきます。

###

沈黙と言葉の力

イシグロは作中で、沈黙と言葉の力を対比させています。登場人物たちの間には、過去の出来事に対する沈黙、感情を抑圧する沈黙、そして真実を隠蔽する沈黙が存在します。一方、言葉は記憶を呼び起こし、真実を明らかにし、人々の心を動かす力を持つものとして描かれています。

例えば、アクセルとベアトリスは旅の途中で、過去に何があったのか、自分たちの関係はどうだったのかを少しずつ思い出していきます。それは、彼ら自身の記憶や、他の人物との会話を通して語られる断片的な言葉によって促されるのです。

###

多様な言語と物語

作中には、サクソン人、ブリトン人、ピクト人など、異なる言語や文化を持つ人々が登場します。彼らは互いに理解し合うことが難しく、言葉の壁が対立や不信感を生み出す要因となっています。

また、作中には様々な物語が登場します。登場人物たちは、自分たちの経験を語り継ぐために、あるいは真実を隠蔽するために、それぞれの物語を語ります。これらの物語は、記憶と忘却、真実と虚構といったテーマを探求する上で重要な役割を果たしています。

Amazonで購入する

Leave a comment

0.0/5