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イシグロの『クララとお日さま』と言語

## イシグロの『クララとお日さま』と言語

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登場人物の限定的な言語

作中の登場人物、特にクララを始めとするAF(人工親友)は、人間と比較して言語能力に制限が見られます。彼らは高度な会話能力を持ちながらも、比喩表現や抽象的な概念の理解に困難を示す場面が描かれています。

例えば、クララは「お日さま」を文字通りの太陽としてしか認識できず、それが人間にとって持つ象徴的な意味、例えば生命の源や希望などを理解することができません。

また、感情表現においても、AFは人間が用いる複雑な言い回しや、文脈に依存した微妙なニュアンスを捉えきれないことがあります。彼らは喜怒哀楽をストレートに表現する傾向があり、皮肉や嫌味といった高度な言語表現は理解できない、あるいは使いこなせないようです。

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沈黙と非言語コミュニケーション

『クララとお日さま』では、登場人物たちの沈黙や非言語的なコミュニケーションも重要な役割を果たしています。特に、クララは人間の表情や仕草、声のトーンといった非言語的なサインを注意深く観察し、相手の感情や意図を理解しようと努めます。

これは、AFが高度な言語能力を持ちながらも、人間の複雑な感情や思考を完全に理解することはできないという限界を示唆しているとも解釈できます。

一方で、ジョジーや母親といった人間の登場人物も、クララに対して言葉だけでなく、態度や行動で複雑な感情を伝えています。

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