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イェーリングのローマ法の精神の評価

## イェーリングのローマ法の精神の評価

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評価

ルドルフ・フォン・イェーリングの主著『ローマ法の精神』(Der Geist des römischen Rechts auf den verschiedenen Stufen seiner Entwicklung)は、ローマ法研究において画期的な作品とされ、19世紀後半に大きな影響を与えました。 本著は、法の歴史を、民族精神の所産として捉える歴史法学派の方法をローマ法に適用し、ローマ法の精神を「法的保護に値する利益のための闘争」と規定しました。そして、この闘争の歴史的展開として、ローマ法の歴史を体系的に描き出しました。

本書は、その学識の深さ、洞察の鋭さ、そして文体の魅力によって、専門家のみならず、当時の知識人層にも広く読まれ、大きな反響を呼びました。 特に、法を抽象的な理念としてではなく、現実の社会生活における具体的な力関係や利害関係から説明しようとするイェーリングの視点は、多くの読者に新鮮な驚きと知的興奮を与えました。

しかし、その一方で、本書は、歴史的資料の解釈の恣意性、民族精神という概念の曖昧性、そしてローマ民族中心主義的な歴史観など、多くの批判も招きました。 例えば、本書における「ローマ法の精神」という概念は、イェーリング自身の主観的な解釈に基づいたものであり、歴史的な根拠に乏しいという批判があります。 また、本書は、ローマ法を理想化し、他の法体系を軽視する傾向があると指摘されています。

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影響

上記の評価にもかかわらず、『ローマ法の精神』は、その後のローマ法研究、ひいては法学全体に計り知れない影響を与えました。 本書は、ローマ法を単なる過去の法体系としてではなく、現代法の理解にも不可欠な重要な知的遺産として位置づけ、その後のローマ法研究に新たな視点を提供しました。 また、法を社会的な文脈の中で捉え、その歴史的発展を分析するというイェーリングの方法論は、後の社会法学や法社会学など、新しい法学の潮流を生み出すきっかけとなりました。

さらに、本書は、法学以外の分野にも大きな影響を与えました。 例えば、マックス・ウェーバーは、本書から大きな影響を受け、彼の社会学理論の構築に役立てました。 また、本書は、文学、哲学、歴史学など、様々な分野の知識人にも広く読まれ、当時の知的潮流に大きな影響を与えました。

このように、『ローマ法の精神』は、その後の法学研究、ひいては人文社会科学全体に大きな影響を与えた、記念碑的な作品と言えるでしょう。

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