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イェーリングのローマ法の精神の発想

## イェーリングのローマ法の精神の発想

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ローマ法の衰退と近代法への変容

 ローマ法は、古代ローマにおいて成立し、中世ヨーロッパにおいても権威を持ち続けた法体系です。しかし、時代が進むにつれて、社会構造や経済活動が複雑化し、ローマ法は現実の社会に対応できなくなっていきます。そこで、ローマ法を解釈し、現実社会に適用するために、様々な試みがなされました。その中でも、特に重要なのが、注釈学派や usus modernus pandectarum(パンデクテン法近代学派)による研究です。彼らは、ローマ法の条文を解釈し、現実の社会問題に適用するための理論を構築しました。

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イェーリングの登場と歴史主義法学への批判

 19世紀に入ると、サヴィニーに代表される歴史主義法学がドイツを中心に隆盛します。歴史主義法学は、法を民族の精神が生み出した歴史的産物と捉え、法典化に反対し、歴史的な研究を通じて法を発見しようとしました。しかし、イェーリングは、歴史主義法学が法をあまりにも抽象的・観念的に捉えすぎていると批判します。彼は、法は社会生活の現実から生み出されるものであり、社会の必要に応じて変化していくべきだと主張しました。

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「ローマ法の精神」における目的概念の重視

 イェーリングは、1852年から1865年にかけて執筆した全3巻からなる大著『ローマ法の精神』の中で、ローマ法を単なる歴史的な遺物としてではなく、近代法の礎として捉え直しました。彼は、ローマ法の条文背後に隠された法的概念や原理を分析し、その本質を明らかにしようとしました。特に、彼はローマ法の精神を「法的目的の闘争」と捉え、個々の法的規則は、一定の目的を達成するために設定されたものと理解しました。

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ローマ法の現代的意義の提示

 イェーリングは、『ローマ法の精神』において、ローマ法を分析対象としながらも、単なる歴史研究に留まらず、近代法における法解釈や法創造の指針を示そうとしました。彼は、ローマ法の持つ論理的な整合性や体系性を評価し、近代法の構築にも役立つものと見なしました。そして、法的概念や原理を歴史的な文脈から切り離して分析し、現代社会にも適用可能な普遍的な要素を抽出しました。

 以上のように、イェーリングは、『ローマ法の精神』において、単なる歴史的な研究を超えて、近代法のあり方を問う普遍的な法思想を提示しました。彼の思想は、その後の法学研究に多大な影響を与え、現代においても重要な示唆を与え続けています。

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