イェーリングのローマ法の精神の主題
ローマ法の支配とローマ的でない要素との融合
ルドルフ・フォン・イェーリングの代表作『ローマ法の精神』は、ローマ法が古代ローマから近代ヨーロッパに至るまで、どのように発展し、社会に浸透していったのかを、歴史的、社会学的、哲学的な観点から考察した壮大な著作です。
イェーリングは、ローマ法の真髄は、単なる法典や法解釈の技術論に留まらず、法の背後にある「精神」―すなわち、ローマ人特有の法的思考様式や価値観― にあると捉えました。
法的関係における「目的」の重視
イェーリングは、ローマ法の精神を特徴づける要素として、特に「目的」への意識を強調しました。ローマ人は、法を単なる抽象的な規則の集合体とみなすのではなく、社会生活における具体的な問題を解決するための実践的な道具として捉えていました。
そのため、彼らは個々の法的関係における「目的」を重視し、形式的な論理よりも、実質的な正義を実現することに重きを置いたのです。
ローマ法発展の原動力としての「闘争」
『ローマ法の精神』においてイェーリングは、ローマ法の発展を、様々な法的利益を追求する個人や集団の間の絶え間ない「闘争」の歴史として描いています。貴族と平民、家父長と家族成員、債権者と債務者など、様々な立場の人々が、それぞれの権利を主張し、法の適用をめぐって争う中で、ローマ法は次第に洗練され、複雑化していったのです。
ローマ法の受容と変容
イェーリングは、ローマ法がヨーロッパ社会に広く受容された理由として、その高度な法的技術や論理体系に加え、ローマ法が内包する「法的合理性」を挙げました。しかし、同時に彼は、ローマ法がそれぞれの時代の社会状況や法的文化に応じて、受容と変容を繰り返してきたことも指摘しています。
ゲルマン法やキリスト教の影響を受けながらも、ローマ法は近代ヨーロッパの法体系の基礎となり、現代社会にも影響を与え続けています。