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アーレントの全体主義の起源の翻訳

## アーレントの全体主義の起源の翻訳

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翻訳の難しさ

アーレントの主著『全体主義の起源』は、その難解な議論と独特の用語法で知られており、翻訳は容易ではありません。特に、アーレントの思想の中核をなす概念、例えば「全体主義」「公的領域」「労働」「仕事」「活動」などは、既存の日本語の語彙では十分に表現しきれないことが多く、翻訳者は適切な訳語を選択するのに苦慮してきました。

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主要な概念の翻訳

例えば、「全体主義 (totalitarianism)」は、初期の翻訳では「全体主義」と訳されていましたが、これは国家による社会全体の統制を指す一般的な用語であり、アーレントが意図した、個人の主体性と多元性を完全に抹殺するような、全く新しいタイプの政治体制というニュアンスを十分に伝えきれていませんでした。後の翻訳では「全体支配」といった訳語も用いられ、より原語に近い意味を表そうとしています。

また、「the public realm」は、初期の翻訳では「公共圏」と訳されていましたが、これは国家と個人の間の領域を指す一般的な用語であり、アーレントが意図した、個人が自由で平等な立場で政治に参加し、共通の事柄について議論する空間というニュアンスを十分に伝えきれていませんでした。後の翻訳では「公共性」といった訳語も用いられ、より原語に近い意味を表そうとしています。

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翻訳の変化と影響

このように、『全体主義の起源』の翻訳は、時代とともに変化してきました。これは、アーレント研究の進展や、日本語の語彙の変化などを反映したものであり、翻訳が単に原文を別の言語に移し替える作業ではなく、解釈を含んだ創造的な行為であることを示しています.

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